砲丸投げはギルが21m57で辛勝
ニュージーランド国内では抜きんでた実力を持つトマス・ウォルシュ(32)とジャコ・ギル(29)の両雄が激突。
昨年に続き、ギルが21m51に留まったウォルシュを下し二年連続で国内王者に輝いた。直接対決では9勝30敗と大きく負け越しているギルだが、昨年は自己ベストをついに22m台に乗せ、ようやく偉大なる先輩の影を踏める存在にまで成長してきている。
今でこそウォルシュに次ぐ二番手という地位に甘んじているが、元々はギルの方が若い年代で先に頭角を現したのは投擲ファンなら誰もが知るところだろう。
2011年に24m45(5㎏)のU18世界最高記録をマークし、同年には当時17歳ながら一般規格(7.26㎏)で20m38、2013年には23m00(6㎏)のU20世界記録を叩き出し、”神童”の名をほしいままにした。
ところがシニアの舞台に上がってからは成長が鈍化。いつの間にか台頭してきたウォルシュに瞬く間に取って代わられ、かつての神童も世界の舞台においては平凡な選手として目立たない存在に追いやられていった。
しかし、”早熟“のイメージがつきまとうギルも、実はほぼ毎年ベストを更新している。2018年には心臓発作を患い一時は生命の危機に見舞われたが、地道にリハビリに励み翌年に競技復帰。2019年世界陸上ドーハ以降、世界大会では必ず決勝進出を果たしており、記録だけでは測れない勝負強さこそが現在のギルが持つ強みである。
ライアン・クルーザーの台頭以降、表彰台には必須となった22mの大台。アメリカ勢を筆頭に22m以上のベストを持つ猛者が犇めく世界の大舞台だが、決してメダルの射程圏外にいる存在ではない。オリンピック決勝で自己ベストを上回るような渾身の一投が出れば…という可能性は感じさせられるダークホースである。
疲労の色隠せず60mに届かなかったベル
今季は65m39で好調なシーズンインを迎えたベル。危なげなく国内選手権V4を決めるも、この日は57m83と低調な記録に終わる。
自身のSNSにて「アメリカでの競技シーズンを見据えてハードトレーニングを行っていたので記録は下がると思っていたが、それでも57m83は予想以下だ」と落胆する様子を見せた。
毎年一月から試合出場する傾向があるだけに、好記録がシーズン序盤に集中するきらいがあるベル。昨年は世界陸上ブダペストで決勝進出を果たすもベスト8には残れず、10位に終わった。
しかしまだ22歳と若く、20代前半のうちに決勝を経験できただけでも大きな意味があるだろう。ターン技術は光るものを持っており、大舞台でも戦える精神力がある。
あとは地力だけだ。
自己ベストを67m台まで伸ばし、65mの突破回数を重ねていけば自ずと上位入賞が見えてくる逸材には違いない。
一歳下の世代にはマイコラス・アレクナ(リトアニア)という天才メダリストがいるが、今後長きに渡り彼のライバルとして活躍できる可能性も十分にある。
まずは自身初のオリンピックに向け、万全の調子で試合に臨んでもらいたい。