ターナー・ワシントンが全米学生王者に マイコラス・アレクナは3位に甘んじる

71m00の学生記録保持者マイコラス・アレクナがまさかの敗北─なんとかトップ3入りは果たしたものの、本来のパフォーマンスからはかけ離れていた。

学生王者に輝いたのは2021年の覇者、ターナー・ワシントン。一時期競技を離れていたワシントンだが、今季は砲丸投げでも円盤投げでも復調の兆しを見せていた。

苦悩を乗り越えたエリートスロワー

昨年6月以来、精神的な問題により競技を離れていたワシントン。しかしアリゾナ州立大の先輩、ライアン・ワイティングのサポートもあり今年2月に競技へ復帰。ブランクもあり、自己記録から程遠い状態からの再スタートを切ったが、試合を追うごとに徐々に調子を取り戻してきていた。

7日に行われた全米学生選手権男子砲丸投げでは、ジョーダン・ガイスト(アリゾナ大)に敗れはしたものの21m04の今季自己最高をマークして2位。

そして9日に行われた円盤投げでは、五投目まで65m55でトップに立っていたRoje Stonaを最終投擲で大逆転。66m22をマークし、2021年5月以来の66mスローを達成し“本職”で復活を印象付けた。

https://twitter.com/ThrowersUni/status/1667362067269943296

あわや失格に?

優勝後、興奮のあまりシャツを脱ぎ捨て喜びを顕わにしたワシントン。ところがこのパフォーマンスに「シャツを着るように」との警告が飛び、あわや失格となるところだったという。

試合後のインタビューでワシントンはこう語っている。

目立ちたい時に目立つななんて言われる筋合いはないね。観客が見たいのはこういうのだろ。つまんねえもんのために来てるんじゃねえよ

将来を嘱望された選手ならではの苦悩を味わってきたワシントン。大逆転優勝で二年ぶりに学生王者に返り咲いたとなれば感情を爆発させるのも仕方がないことだろう。

アレクナまた王座を逃す

ワシントンが栄光を取り戻した一方で、もう一人のエリート選手が苦戦を強いられていた。

世界陸上銀メダル,欧州選手権金メダルとシニアデビュー一年目にしてかつてない偉業を達成したマイコラス・アレクナ(カリフォルニア大バークレー校)。今季71m00の学生記録、世界最高記録を引っ提げて全米学生に乗り込んだレジェンドの息子がまさかの敗戦。

昨年はわずか2センチ差でクラウディオ・ロメロ(ヴァージニア大,現ルイジアナ州立大)に敗れ、今年はなんとしても学生王者の称号が欲しかった。

しかし今年はロジェ・ストーナ(アーカンソー大)が立ちはだかった。アレクナは一投目・二投目をファウル。三投目になんとか帳尻を合わせ61m86をマークし、5位でベスト8進出を決めた。一方Stonaは四投目に65m55をマークしてワシントンを逆転。

アレクナはその後も62m49、ファウル、63m25に留まり完全に精彩を欠いた試合となってしまった。

今季は68m39でシーズンインし、その後も68m35,71m00,70m40,67m75と安定して好記録をマークしていただけに大方の予想を裏切る大番狂わせの展開となった。

また、63m25は昨年三月の62m63に次ぐシニア規格での自身ワースト2の記録でもある。同日に兄のマルティナスが67m23という今季世界10位の快投を放ったこともあり、弟マイコラスも大きな刺激を受けたものと思われたが……。

しかし相手はどちらも1999年生まれの上級生。二年生、そして20歳であることを考慮するといかに天才とはいえ未熟な面が露呈してしまうこともあるかもしれない。

※トライアルで67m前後投げていたという情報もある

辛い一日になったね。気負いすぎたんだろう。良い教訓になったよ。将来この経験から学ぶこともあるだろう。自分でも何が起きたのかよくわかってないが、言い訳をするつもりはない。ただ力を出せなかっただけだ(アレクナ)

次戦はダイヤモンドリーグストックホルム。昨年自身初のDLリーグデビューを飾った地であり、69m81の自己ベスト(当時)をマークした思い出深い場所だ。このまま終わる男ではない。今回の経験を糧に更なるビッグスローに期待したい。

リザルト:https://flashresults.ncaa.com/Outdoor/2023/018-1_compiledSeries.htm