陸上競技の世界記録一覧。()内は風速/スコアリングテーブルの点数。
なお、スタジアムの外で実施されるロード競技は厳密には世界最高記録という扱いである。
短距離(Sprints)
陸上の花形スプリント種目
100m
9秒58(+0.9/1356) ウサイン・ボルト(Usain Bolt)
2009年8月16日 Olympiastadion, Berlin (GER)
【参考】日本記録:9秒95(+2.0)山縣亮太 2021年
- スプリットタイム1参考:https://speedendurance.com/2009/08/19/usain-bolt-10-meter-splits-fastest-top-speed-2008-vs-2009/
- リアクションタイム 0.146
0-10m 1.89
10-20m 0.99
20-30m 0.90
30-40m 0.86
40-50m 0.83
50-60m 0.82
60-70m 0.81(最高速)
70-80m 0.82
80-90m 0.83
90-100m 0.83
- ボルトはスタートが遅い?
- 「ボルトは身体が大きいからスタートが苦手だ」と考えている人を多く見かける。実はこの“スタート”が何を指すかによって全く見当違いの認識となってしまうことはご存じだろうか。スタート=号砲に反応してスターティングブロックを蹴りだすタイム(=リアクションタイム)を意味するならば間違いではない。実際にボルトのリアクションタイムはあまり早い方ではなく、9.58の世界新をマークしたレースでは8人中7番目の反応速度であった。過去に世界陸上決勝でフライング失格したことからも苦手意識があると言えるだろう。ところがもし、前半の、例えば30m区間までの飛び出しを指しているのではあれば大きな間違いだ。研究ソースによって多少差異はあるが、30m地点史上最速のスプリットタイムを叩き出したと言われている蘇炳添(東京五輪準決勝,9秒83)で3秒58、ベルリンのボルトは3秒63である230mのスプリットタイムはこちらを参照した。なおリアクションタイムは含まれていない。東京五輪00m金メダルのラモント・ジェイコブスが3秒67,同じく銀メダルのフレッド・カーリーが3秒66であったことを考慮すればむしろボルトの前半加速は速い部類であると言えるのである。ボルトは後半の加速、もといスピード持久力に優れているためスタートが遅い=前半が遅いと誤解されるようになったのだろう。
200m
19秒19(-0.3/1352) ウサイン・ボルト(Usain Bolt)
2009年8月20日 Olympiastadion, Berlin (GER)
【参考】日本記録:20秒03(+0.6)末續慎吾 2003年
- スプリットタイム3参考:https://speedendurance.com/2009/08/21/usain-bolt-200-meter-splits-speed-reserve-and-speed-endurance/
- リアクションタイム 0.133
0-50m 5.60
100m 9.92
150m 14.44
400m
43秒03(1321) ウェイド・バンニーキルク(Wayde VAN NIEKERK)─南アフリカ
2016年8月14日 Estádio Olímpico, Rio de Janeiro (BRA)
【参考】日本記録:44秒78 高野進 1991年
- スプリットタイム4https://www.track-stats.com/how-van-niekerk-broke-the-400m-world-record/
- リアクションタイム 0.181
0-50m 6.00
50-100m 4.70
100-150m 4.80
150-200m 5.00
200m-250m 5.10
250-300m 5.40
300-350m 5.80
350-400m 6.20
4x100mリレー
36秒84 (1318)ジャマイカ(ネスタ・カーター/マイケル・フレーター/ヨハン・ブレイク/ウサイン・ボルト)
2012年8月11日 Olympic Stadium, London (GBR)
【参考】日本記録:37秒43 (多田修平/白石黄良々/桐生祥秀/サニブラウン・アブデル・ハキーム)2019年
4x400mリレー
2分54秒29 (1288)アメリカ(マイケル・ジョンソン,ブッチ・レイノルズ,クインシー・ワッツ,アンドリュー・バーモン)
1993年8月22日 Gottlieb-Daimler Stadion, Stuttgart (GER)
※1998年にアメリカチームが樹立した世界記録2分54秒20はリレーメンバーの一人アントニオ・ペテグリューが試合当日を含む当該期間のドーピングを認めたため抹消5https://www.theguardian.com/sport/2008/aug/12/olympics2008.athletics。
【参考】日本記録:2分59秒51(佐藤風雅/川端魁人/ウォルシュ・ジュリアン/中島佑気ジョセフ)2022年
- スプリットタイム6https://speedendurance.com/2012/08/14/usain-bolt-the-fastest-relay-split-in-4×100/
- ジョンソン 42.94
レイノルズ 9.07
ワッツ 9.09
バーモン 8.70
- 非五輪種目
- 300m
30秒81(1274) ウェイド・バンニーキルク─南アフリカ
2017年6月28日 Mestský Stadion, Ostrava (CZE)
【参考】日本記録:32秒21 藤光謙司 2015年
600m
1分12秒81(1239) ジョニー・グレイ(Johnny GRAY)
1986年5月24日 Santa Monica, CA (USA)
中距離(Middle)
転倒や接触が多発する激しさからトラックの格闘技と呼ばれる
800m
1分40秒91(1301) デイヴィッド・ルディシャ─ケニア
2012年8月9日 Olympic Stadium, London (GBR)
【参考】日本記録:1分45秒75 川本奨 2014年/源裕貴 2021年
1500m
3分26秒00 (1302) ヒシャム・エルゲルージ
1998年7月4日 Stadio Olimpico, Roma (ITA)
【参考】日本記録:3分35秒42 河村一輝 2021年
3000m障害 steeplechase
7分53秒63 (1288) サイフ・サイード・シャヒーン
2004年9月3日 Boudewijnstadion, Bruxelles (BEL)
【参考】日本記録:三浦龍司 8分09秒92 2021年
- 非五輪種目
- 1000m
2分11秒96(1250) Noah NGENY
1999年9月5日 Rieti (ITA)
【参考】日本記録:2分19秒65 小林史和(NTN) 2015年
マイル(1600m)
3分43秒13 (1292) ヒシャム・エルゲルージ
1999年7月7日 Stadio Olimpico, Roma (ITA)
【参考】日本記録:3分56秒60 荒井七海(Honda)2019年
2000m
4分44秒79 (1290) ヒシャム・エルゲルージ
1999年9月7日 Olympiastadion, Berlin (GER)
【参考】日本記録:5分7秒24 小林史和(NTN)2006年
3000m
7分20秒67(1299) ダニエル・コーメン
1996年9月1日 Rieti (ITA)
【参考】日本記録:7分40秒09 大迫傑(日清食品グループ)2014年
2マイル(3200m)
7分58秒61(1276) ダニエル・コーメン
1997年7月19日 Hechtel (BEL)
2000m障害
5分10秒68 (1248) Mahiedine MEKHISSI
2010年6月30日 Reims (FRA)
長距離(Long)/ロードレース(Road Running)
5000m
12分35秒36(1302) Joshua CHEPTEGEI
2020年8月14日 Stade Louis II, Monaco (MON)
【参考】日本記録:13分08秒40 大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)2015年
10000m
26分11秒00(1306) Joshua CHEPTEGEI
2020年10月7日 Estadio de Atletismo del Turia, Valencia (ESP)
【参考】日本記録:27分18秒75 相澤晃(旭化成)2020年
マラソン Marathon
2時間01分39秒(1303) エリウド・キプチョゲ(Eliud KIPCHOGE)
2018年9月18日 Berlin (GER)
【参考】日本記録:2時間4分56秒 鈴木健吾(富士通)2021年
- 非五輪種目
- ロードレース5km
12分49秒(1250) Berihu AREGAWI
2021年12月31日 Barcelona (ESP)
【参考】日本記録:13分55秒 佐藤敦之(中国電力)2007年
ロードレース10km
26分24秒(1285) Rhonex KIPRUTO
2020年1月12日 Valencia (ESP)
【参考】日本記録:28分5秒 佐藤敦之(中国電力)2007年
ロードレース15km
41分05秒(1285) Joshua CHEPTEGEI
2018年11月18日 Nijmegen (NED)
【参考】日本記録:42分36秒 佐藤敦之(中国電力)2007年
ロードレース10マイル(36㎞)
44分24秒(1285) ハイレ・ゲブレセラシエ(Haile GEBRSELASSIE)
2005年9月4日 Tilburg (NED)
【参考】日本記録:45分40秒 新宅雅也(エスビー食品)1984年
ロードレース20km
26分24秒(1285)Zersenay TADESE
20103月21日 Lisboa (POR)
【参考】日本記録:
ハーフマラソン Half Marathon
26分24秒(1285) ヤコブ・キプルモ( Jacob KIPLIMO)
2021年11月21日 Lisboa (POR)
【参考】日本記録:56分52秒 藤本拓(トヨタ自動車)2020年
ハードル(Hurdles)
110mH
2012年9月7日 Boudewijnstadion, Bruxelles (BEL)
【参考】日本記録:13秒06 泉谷駿介(+1.2,順天堂大)2021年
400mH
45秒94 (1341)カーステン・ワーホルム
2021年8月3日 Olympic Stadium, Tokyo (JPN)
【参考】日本記録:47秒89 為末大(法政大)2001年
跳躍(Jumps)
走り幅跳び Long Jump
8.95m(+0.3/1346) マイク・パウエル
1991年8月30日 Olympic Stadium, Tokyo (JPN)
【参考】日本記録:8m40 城山正太郎(+1.5,ゼンリン)2019年
- 世紀の東京決戦
- 1991年東京世界陸上では当時短距離の大スターであったカール・ルイス(アメリカ)とマイク・パウエルの一騎打ちが大会ハイライトの一つになった。既に当大会で100m金メダル・世界新記録(当時,9.86)を樹立していたルイスは元々走り幅跳びを得意とする選手であり、この大会まで64連勝を続けており金メダル大本命と目されていた。そのライバルがパウエル。ルイスは決勝三回目の試技で8m83(追い風参考),4回目にはこちらも8m91wをマーク。1968年メキシコ五輪でボブ・ビーモンが打ち立てた8m90の世界記録7メキシコシティは標高2000mを超える高地(空気抵抗が小さい)であったことや、従来の世界記録を55㎝上回る傑出性などから更新が限りなく難しいと見られていた。2022年現在でもこの記録は世界歴代2位の記録であり、パウエルしか超えていない。を追い風参考ながら上回った。ルイスの優勝確定かと思われた5回目、パウエルは声が出るほどの渾身の跳躍を見せた。記録は8m95。23年破られなかった不滅の世界記録を破り、ルイスを逆転。大歓声が旧国立競技場にこだました。ルイスの6回目は8m84に終わり、走り幅跳び史上類を見ない連勝記録は劇的な終焉を迎えた。
走り高跳び High Jump
2.45m (1314)ハビエル・ソトマイヨール(Javier SOTOMAYOR)
1993年7月27日 Salamanca (ESP)
【参考】日本記録:2m35i 戸邉直人(つくばツインピークス)2019年 ※室内記録
三段跳び Triple Jump
18.25m(+1.3/1303) ジョナサン・エドワーズ
1995年8月7日 Ullevi Stadium, Göteborg (SWE)
【参考】日本記録:17m15 山下訓史(日本電気)1986年
- かつてはお家芸
- 戦前のオリンピックでは織田幹雄(1928年アムステルダム),南部忠平(1932年ロサンゼルス),田島直人(1936年ベルリン)らが三大会連続で金メダルを獲得するなど日本のお家芸と言える種目であった。現在では彼らの功績を讃えた記念大会がそれぞれ開催されている。しかし日本記録が長らく更新されておらず世界水準に程遠い状態が続いている。
棒高跳び Pole Vault
6.21m アルマンド・デュプランティス
【参考】日本記録:5m83 澤野大地(ニシ・スポーツ)2005年
投擲(Throws)
砲丸投げ Shot Put
23.56m ()ライアン・クルーザー(Ryan Crouser)
2023年5月27日
ライアン・クルーザー(英語:Ryan Crouser)はアメリカの砲丸投げ・円盤投げ選手。2016年リオ五輪で金メダルを獲得。男子砲丸投げの世界記録保持者(屋外23m56/室内22m82)。 テキサス大学卒、現在の所属はナイキ。 ※クラ[…]
【参考】日本記録:18m85 中村太地(チームミズノ) 2018年
どこがスゴイ?
- クリーンな世界記録
- 砲丸投の旧世界記録(23.12m)はランディ・バーンズ(アメリカ)が31年間保持していたが、この記録は選手やファンの間で疑惑の記録として扱われ続けていた。なぜなら、バーンズは世界記録を樹立した数ヶ月後にアナボリックステロイドの陽性反応によるドーピング違反で27か月の資格停止処分を受けているからである。バーンズはその後アトランタ五輪で優勝するなど再び表舞台で活躍したが、1998年市販薬に含まれていたアンドロステンジオンに陽性反応を示し永久資格停止処分を科せられ陸上界を追放された。クルーザーの世界新は砲丸投=薬物を象徴していたバーンズの記録に終止符を打ったのである。
円盤投げ Discus Throw
74.08m (1320)ユルゲン・シュルト(Jurugen Schult)
1986年6月6日 Neubrandenburg (GDR)
※男子五輪種目最古の記録
【参考】日本記録:62m59 堤雄司(ALSOK群馬)2020年
ハンマー投げ Hammer Throw
86.74m (1307) ユーリー・セディフ(Yuriy Sedykh)
1986年8月30日 Neckarstadion, Stuttgart (GER)
【参考】日本記録:84m86 室伏広治(ミズノ)2003年
- 室伏でさえ…
- ハンマー投と言えば室伏広治を思い浮かべる人がほとんどであろう。室伏の持つ日本記録は84m86(2003年)で、セディフに約2メートル及ばない。室伏自身84m台は84m86を投げた試合でマークした84m80を含めても二回しか記録しておらず、いかにセディフの記録が傑出しているかを物語っている。
やり投げ Javelin Throw
98.48m (1365) ヤン・ゼレズニー(Jan ŽELEZNÝ)
1996年5月25日 Jena (GER)
【参考】日本記録:87m60 溝口和洋(ゴールドウイン)1989年
規格にまつわるデマ
男子やり投の規格は1986年に現行規格へ変更されたため、旧規格の記録とは別集計になっている。規格変更のために更新困難になったと誤解している方が少なくないが、ゼレズニーの世界記録は現行規格で出されたものである。規格変更の理由は安全上の問題だけではなく、公正な競技運営を目指し記録を正確に測定するためでもあった。現行のやりは旧規格よりも重心が4センチ前方に位置し、地面に刺さりやすくなったことで痕跡が残りやすくなった。
混成(Combined Events)
- 種目別記録内訳
- 100m 10.55 (+0.3)
走り幅跳び 7.80 (+1.2)
砲丸投げ 16.00
走り高跳び 2.05
400m 48.42
110mH 13.75 (-1.1)
円盤投げ 50.54
棒高跳び 5.45
やり投げ 71.90
1500m 4:36.11
競歩(Race Walks)
20km競歩
1時間16分36秒(1266) 鈴木 雄介
2015年3月15日 Nomi (JPN)
50㎞競歩
3時間32分33秒(1269) ヨハン・ディニズ(Yohann DINIZ)
2014年8月15日 Letzigrund, Zürich (SUI)
【参考】日本記録:3時間36分45秒 川野将虎(東洋大)2019年
スコアリングテーブル順位
- やり投 ヤン・ゼレズニー 98.48m(1365)
- 100m ウサイン・ボルト 9.58(1356)
- 200m ウサイン・ボルト 19.19(1352)
スコアリングテーブルはあくまで指標であり、種目間での記録的価値を比較するものではないことを留意されたい。